テント村通信アーカイブ



安保強化に対抗する、名護市長選の勝利(2014年2月号)




 安保強化・集団的自衛権をめぐる動きが急になっている。安倍首相は7月の参院選で「ねじれ」を解消してのち、集団的自衛権の容認をめざしてきた。その仕掛けは中国との対立の先鋭化である。昨年10月の日米安保協議委員会でその容認を宣言、12月には国家安保戦略―新たな防衛計画大綱―中期防を閣議決定した。特定秘密保護法の制定がそれに続く。


 開会直後の通常国会をサボり、インドの「共和国記念日」の軍事パレードに参加したが、それは中国包囲網の強化(日印の安保定期協議の開始)が狙いだった。また先日、安倍は今日の日中関係を、「第1次対戦前のイギリスとドイツの関係」になぞらえた。世界経済を支配するイギリスへの、新興ドイツの挑戦の構図だ。日中関係はいずれ戦争に至ると、安倍は中国を挑発したのである。


沖縄差別に反対し、勝ちとられた稲嶺再選


 これに「待った」をかけたのが1月19日、沖縄・名護市長選における稲嶺さんの勝利だった。これに至る過程で、仲井真知事の「雲隠れ」があった。病気と称して都内の病院にこもり、おそらく政府との調整を行っていたのであろう。そして「負担軽減」の空言と、3000億円規模の予算措置に躍り上がり、辺野古の埋め立てにゴーサインを出したのだ。これに対し沖縄の人々は「屈しない」のプラカードを掲げて県庁ホールを埋め、那覇市議会は「抗議」の意見書を出した。


 市長選に際し自民党は、県連に「県外移転」の公約を撤回させ、投票日まじかには名護地域振興基金500億円の話をもちだした。金にものをいわせるこのような動きが、逆効果だったことは明らかだ。名護の人々は、沖縄にだけ金で負担を押し付ける差別の臭いをかぎ取った。「沖縄にも民主主義を適用してもらいたい」(琉球新報)と、当たり前の主張を行動に移したのである。それは普天間基地撤去、ヘリパッド基地建設阻止の闘いと連動し、安倍の集団的自衛権容認の動きを阻んでいる。


「おおすみ」の事故は自衛隊の慢心の結果だ


 次期防の大軍拡の動きのなか、1月15日、呉軍港を出港した輸送艦「おおすみ」が瀬戸内海で釣り船に衝突、2名が亡くなった。「おおすみ」が追い越そうとして接触したのだが、そのさい注意義務は「おおすみ」側にあった。自衛隊艦艇と民間船の事故は、88年の潜水艦「なだしお」、08年のイージス艦「あたご」などの例がある。前者では遊漁船の30名が死亡。後者では漁船の2名が亡くなり、死体も上がらなかった。厚い装甲の軍艦に衝突されると、民間船はひとたまりもない。


 「おおすみ」は輸送艦である。基準排水量8900トンの大型船で、フル装備の兵士330名を乗せ、エアクッション型揚陸艇で上陸作戦を展開、後部甲板からヘリコプターでの輸送もできる。昨年6月の日米共同演習では、アメリカ海兵隊のオスプレイが、同型艦の「しもきた」に離発着訓練を行った。すなわち次期防が想定する、「占領された離島」を急襲・奪還する作戦の前提となる艦船なのだ。空母と同じように艦橋が右舷に寄っていることから、左側を航行する漁船の発見ができなかったと、自衛隊は言い訳をしている。だがレーダーに漁船は映っていたはずだ。また瀬戸内海のような内海でフル出力の80%以上の速度をだし、漁船の前に回り込むような行為に、言い訳の余地はない。


差別と戦争挑発の安倍政権を打倒しよう


 安倍は安保とナショナリズムの強化を煽り立てている。なぜならいくらカネを金融市場に投入しても、一部の投資家の利益を生むだけで、実体経済の好転は望むべくもないからだ。今春のベースアップもおぼつかない。非正規労働者は昨年7月で38%を超えた。社会が壊れ、人々に生き続ける展望を与えられないとしたら、国家―国民の一体性を強調するしかない。そのお手軽な手段が戦争の挑発というわけだろう。しかしそれは、社会的な差別を増幅させ、ますます世の中を壊していくことでしかない。


 沖縄の人々はよく「肝苦(ちむぐ)りさ」と言う。人の苦しみが我がことのように思われ、心が痛むというのである。私たちは、その心で闘われた名護市長選の勝利に学び、差別と軍事強化に反対して、安倍を打倒しなければならない。




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