尖閣諸島問題を利用した
国家主義、排外主義に反対する!



 9月7日、尖閣(中国では釣魚)諸島の近海で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突し拿捕された事件をめぐり、ナショナリズムの嵐が吹き荒れている。民主党菅内閣は発足後、「尖閣諸島問題で解決すべき領有権の問題はそもそも存在しない」と閣議決定し、総理署名を行った。この政府姿勢を受けて、海上保安庁が中国漁船乗組員の逮捕というこれまでにない強硬な行動に出た可能性が高い。しかし現実には、1972年の日中国交回復も、この問題を「棚上げ」にして行われたという歴史的事実がある。係争があることを認め、冷静な対話ができる環境を作り出すことこそ日本政府に求められている。

 領有権については、国際法上の問題が全世界に存在する。領土問題は漁業や地下資源などの問題が絡んで、きわめて醜い争いとなるのが常であった。戦争や侵略行為で先住民族を追い出し、奪い取った植民地が宗主国の領土とされた例は多い。とりわけ資本主義社会成立以降の帝国主義諸国間の植民地争奪戦は、二つの世界大戦を招くほど大きな争いとなった。さらに第二次大戦後の東西冷戦時と冷戦体制崩壊時には、めまぐるしく国境が入れ替わり、いくつもの国家が消滅、あるいは生まれるに至った。我々は現在、国家という枠組みの中でやむを得ず生活しているが、国家というものの呪縛に常にとらわれる必要はない。民衆の交流、国際連帯は国家の枠を越えて自由に行われるべきであるし、国民国家を越えた社会を展望するべきなのである。

 我々テント村は、今回の問題を政治利用し、日米安保体制の堅持や、沖縄の米軍基地強化、あるいは先島諸島への自衛隊配備、自衛隊の装備・訓練強化など、軍備拡張・強化に向かうすべての動きに反対する。米国クリントン国務長官は、「安保の対象に尖閣諸島がなる」と発言したとマスコミが報じたが、同時に、「アメリカは尖閣諸島の領有権(主権)については最終的に判断する立場にない」「領有権問題は当事者間の平和的な解決を期待する」とも述べている。この「安保の対象」という言葉は、中国との全面的軍事対決に踏み切ることも辞さず、という意味では全くない。米国にとって、日中が適度に対立し、緊張関係を保持し続けることは、沖縄の米軍基地を維持・強化し、日本に多額の「思いやり予算」をはき出させ続ける上できわめて好都合なのである。こうした米国の軍事戦略に乗り、アジアでの軍事的緊張関係をあおる愚かな動きに我々は対決しなければならない。この問題で、NHKをはじめとするマスメディアがナショナリズムをあおる行為に荷担しているのも強く批判されるべきである。

 菅内閣は明らかに高度の政治判断に基づいて行われた今回の行動の経過を、きちんと政府の責任において説明するべきである。そして閣議決定の内容を訂正し、冷静な対話ができる環境を整えるべきである。かつて李ライン周辺や北方海域では日本の漁船が盛んに拿捕されたが、この時も日韓、日ソ(現ロシア)間の主張の違いは大きかった。政府は、こうした現実を踏まえた冷静な対応をするべきである。  

 テント村は、日本を含めアジアのすべての民衆が国家の抑圧、資本の収奪から解放されることを願うものである。極端な民族主義や排外主義、国家主義的な動きは、それがどこの国のものであれ、強く批判する。国家そのものへの本質的な批判抜きで真の民衆連帯も解放あり得ないと断言する。 

(1)政府は閣議決定を訂正し、誠実な話し合いで問題を解決せよ。
(2)マスコミは、国家主義・排外主義的な宣伝をやめよ。
(3)軍事的緊張をあおる動きに反対し、積極的に発言をつづけよう。

 以上、尖閣諸島問題への声明とする。

                        2010年9月30日    立川自衛隊監視テント村  


過去に出した声明


世田谷国公法事件 控訴審不当判決を批判する声明(2010年5月20日)

国公法弾圧・堀越事件の高裁逆転無罪判決を評価し、
 検察の上告断念を求める声明
(2010年4月1日)

葛飾最高裁判決を批判する声明文(09年12月6日)


inserted by FC2 system